営業という仕事の本質は「人と人のやりとり」です。
そしてこの“人”という存在は、実はとてもわかりやすい反応を繰り返す生き物です。
言葉にしないだけで、私たちは誰もがある程度、人の反応パターンを理解しており、それに無意識に対応しています。今回は、営業という視点から「人の感情認知と反応」を解説しながら、誰もが知っているけれど意識していない“営業の勘所”を言語化してみましょう。
【1】人はわかりやすい生き物である

まず前提として、人間は非常に単純な心理メカニズムで行動しています。
・押しつけられると反発したくなる
・期待されると応えたくなる
・信用されると合理的判断を飛び越えてでも応えたくなる
・不信感を抱くと、どれだけメリットがあっても拒絶する
これは、営業に限らず日常でも感じていることではないでしょうか。
親に「勉強しなさい」と言われると嫌になり、先生に「君ならできる」と言われると頑張りたくなる。
これは決して特別な性格によるものではなく、人間が本質的に持っている反応です。
つまり、営業活動でも「人がどう反応するか」を見極める鍵は、実は私たち自身の中に答えがあるのです。
【2】社長も決裁者も、結局は“人間”である

営業をしていると「社長だから」「決裁権者だから」と構えてしまうことがあります。
ただし経営者も感情を持った人間なのです。
当然、あなたよりもたくさんの経験をしていろいろな人を見てきた人たちです。
そして、生産性もはるかに高く、人間力も一流の方が多いでしょう。
「自分なんかが説明してまともに取り合ってくれるかな?」
「忙しそうに見えるから話しかけにくい」
「この資料を出したら迷惑や不快にさせてしまわないかな?」
そんな風に考えるのは、“相手の立場”を気にしすぎて“人間性”を忘れてしまっている証拠です。
喜ばれることを素直にやる。
信頼される行動をしっかりと行う。
お客様の立場で「こういう対応をされたら嬉しい」と思うことを実行する。
誠実に真剣にお客様と向き合う。
そんな相手に嫌な態度をとる人は少ないはずです。※ただし例外は存在します。
ただし、概ね人の反応は共通するものなのです。そこに営業として、人の感情認知の答えがあるはずです。
構えるのではなく、自分基準で素直に考える。これが“相手の感情”を掴む第一歩です。
【3】感情の反応を意図的に操作する

人の感情は、ある程度“演出”によって動かすことができます。
例えば沈黙。多くの営業マンは沈黙を恐れます。しかし、実はお客様も沈黙は怖いのです。
「何か言わなきゃ」と思って、無意識に話し始めてしまうもの。
だからこそ、意図的に沈黙をつくることで“相手からの発話”を引き出すことができます。
例えば、知らない誰かにその人の好きなモノの話を永遠と聞かされたとします。
嫌ですよね?そのモノ自体に興味があれば、少しは聞こうと思えるかもしれませんが、
次から次へといろんな話をその人がずっと話していたら、おそらく大抵の人は退屈になります。
これは営業でも同じです。そしてマシンガン営業はこれを日常的に自社商品で行っています。
それはお客様もうんざりしますよね…。。。
つまり、「人が嫌がること」や「嬉しく感じること」には一定の共通性があります。
それを知っているかどうか、そして意図的に使いこなせるかどうか、普段から意識できているか、
これによって営業の成果や成長は大きく変わります。
【4】ソーシャルスタイル理論を活用する

ここまで紹介してきたのは「人間共通の感情反応」ですが、ここに「個人差」を加味する必要があります。
そのためのツールが、ソーシャルスタイル理論です。
人は4つのスタイルに分類されます。
・ドライビング型(意思決定が早く、結果重視。強気な印象)
・エミアブル型(感情共感型。人間関係を重視し、慎重)
・エクスプレッシブ型(感情表現豊かで、楽しいこと好き)
・アナリティカル型(論理的で慎重。納得と説明を重視)
たとえば、ドライビング型に対しては結論から話し、長々とした背景説明は不要。
一方、アナリティカル型は「なぜこの提案なのか?」を理論立てて説明する必要があります。
エミアブル型は信頼関係ができないうちは口を閉ざします。
だから雑談や共通点を通じて関係性を築くことが先決です。
このように、相手の「話し方の特徴」「反応パターン」「好きな営業スタイル」「嫌いな対応」を分類して対応することで、共通の感情反応に“個性”をかけ算できるようになります。
【5】感情反応 × 性格傾向 = おおよその戦略が見える

ここが今回の記事の本質です。
「感情に対する共通反応」と「性格による違い」を合わせて考えることで、「だいたいこの方向性で攻めればうまくいきやすい」という仮説が立てられるようになります。
たとえば——
・ドライビング型の社長は、沈黙を恐れず短く決断を促すと効果的
・エミアブル型の担当者には、雑談を交えて不安を減らしてから提案する
・アナリティカル型には、事前資料+説明を徹底し、答えを急がせない
・エクスプレッシブ型には、少しテンション高めに楽しく巻き込み型で
これらは100%ではありません。あくまで「おおよその仮説」でしかありません。
でも、ゼロベースで毎回手探りするより、はるかに営業の成功確率は高まります。
営業にとって「考える材料がある」ということ自体が、すでに武器です。
【まとめ】
人の感情は“読めない”ものではありません。
むしろ、私たちは本能的に反応の傾向を理解しています。
・押すと引かれる
・期待されると応えたくなる
・信頼されると背負いたくなる
・沈黙は誰にとっても怖い
・話を遮られると誰でも不快になる
それをただ意識していないだけです。
この「誰もが知っている感情のパターン」と、「個々の性格傾向(ソーシャルスタイル)」をかけ算することで、営業においては“だいたい当たる方程式”が見えてきます。
これを100%にすることは不可能です。でも、50%を75%に、80%に引き上げることはできる。
そんな感情理解と戦略設計が、今後の営業の成果を変えていく鍵になります。
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【最後に】感情認知は“経験”で磨かれる

ここまで感情と性格傾向の組み合わせについて解説してきましたが、それを実際の営業現場で使いこなせるようになるには「経験値」が重要です。
つまり、「こういうタイプの人にはこういう対応が合うかもしれない」という仮説を立てて、実際に試してみる。
その結果を振り返る。そして修正する。このサイクルを地道に回すことが、営業としての“感情認知力”を育てていきます。
最初はうまくいかなくても構いません。大事なのは、「相手の反応を観察し続ける姿勢」です。
成功も失敗も、すべてが自分の営業センサーを鋭くしてくれる経験になります。
営業は「正解を探す仕事」ではなく、「変化を読み、仮説を更新し続ける仕事」です。
そのためには、型を知り、崩し、また組み立てていく柔軟さが求められます。
“人の反応を言語化し、扱えるようになる”ことが、今後の営業キャリアを大きく左右します。
最後に、自分自身の感情にも丁寧に向き合うことを忘れずに。